明太スパゲッティやイカ明太など様々な料理に利用できる明太子は、日本人の食生活に昔から親しまれてきました。
料理のアクセントや主役としても使われる食べ物ですが、この食材についてあまりよく知らないという人も多いでしょう。
明太子とは、スケトウダラの卵巣を唐辛子などで漬け込んだものです。
朝鮮の言葉でスケトウダラを「明太(ミョンテ)」と呼ぶことからこう呼ばれていると言われています。
しかし朝鮮では明卵と呼んでおり、「めんたいこ」という呼び方は日本だけのものになります。
明太子とはスケトウダラの子どもを意味しており、本来はたらこを示す単語として使うのが正しいとされます。
明太子の原料であるスケトウダラの卵は、成熟するにつれて次第に大きくなっていきます。
最初は皮が厚く、卵の中の粒がまだ未発達の状態です。
たらこにしても粒子感のあるプチプチの食感にはならず、これをガム子と言います。
次に少し成熟すると、卵が発達し粒子感のある食感となり、この時期のものが明太子やたらこ作りに最適な時期となります。
この時期のものは真子と呼ばれます。
真子が成熟すると、卵巣の中の水分が増え始めこの水分がポツポツと目のように見えるようになります。
この時期を目付と呼びます。
さらに成長すると、排卵ができるよう十分に水分が増えた状態になり、この時期のものは水子と呼ばれます。
そして産卵が進むと、最終的には卵巣の皮だけの状態となり、皮子と呼ばれるものになるのです。
■販売価格や流通経路について
様々な状態でお店に並んでいるたらこですが、その形状によって販売される価格や流通経路が大きく異なってきます。
卵巣の形を保ったままの真子の状態では比較的高い価格で取引されます。
形が綺麗であるため、主に贈答や接待などに用いられることが多いです。
皮が切れたものは切れ子と呼び、比較的安い価格で家庭用としてよく使われます。
また皮の全くない粒のみのものは、ばら子と呼ばれます。
ばら子はパック詰めにして業務用に用いられたり、チューブに入れて販売される商品に使用されています。
切れ子は、少しだけ皮の切れたものから、ほとんどばら子の状態に近いようなものまで多くの種類があります。
真子や切れ子、ばら子は、それぞれ形状が異なっていても品質には特に違いはありません。
戦前の頃に比べると、スケトウダラの卵は細く痩せてしまったと言われています。
今では、細いたらこに別のばら子を注入するという技法も生み出されました。
■色について
たらこの色についてです。
たらこの原料は、様々な色があります。
一般的な傾向として、成熟度によって変化するとされています。
まず成熟する前のガム子の状態では、白く厚い皮に覆われていて、透明感がありません。
次の真子より少し前の状態である早真子では、皮が少し薄くなり薄い赤色になっている状態になります。
そして真子の状態では皮は透明感があり薄く、卵は薄い赤色から濃い赤色になります。
目付の状態に進むと、皮は透明感がありますが卵に白いつぶつぶが見られるようになります。
水子まで進むと赤色が薄くなり、白っぽい色になります。
食感は柔らかくなります。
■入っている粒の数
薄い皮にたくさんの小さな粒が入っているのが特徴ですが、どこくらいの粒が入っているのでしょうか。
スケトウダラの卵巣は2つの袋が1対となっていて、この1対を1腹と呼びます。
1腹に入っている卵の数は、もちろん魚体によってばらつきがあります。
雌の魚体重量に対して、卵巣の重量は15〜20%程度となります。
体長が40cmでは卵巣の重さは60g程度とされ、約19〜20万粒、50cmでは110g程で、49〜50万粒の卵が入っているとされているのです。
■作られ方
この食材がどのように作られるか知っていますか。
まず最初に、原料の解凍から始まります。
船の上でスケトウダラのお腹から取り出され、凍結されている原料を解凍します。
原料を専用の解凍機に入れて鮮度が落ちないよう一晩かけて、温度管理を行いながらゆっくり解凍します。
次に塩蔵です。
解凍された調味のされていない原卵である生子を塩水に浸け、塩蔵たらこにします。
塩水に漬け込む塩蔵という工程によって、卵のタンパク質が変性して固くなり、プチプチとした食感のたらこになるのです。
この時の塩分濃度が低いとたらこのプチプチ感が出ません。適度な塩分濃度は7%とされますが、それでは塩辛くなってしまうため5%程が良いとされています。
塩蔵が出来たら、塩蔵たらこを辛子の入った調味料に漬け込み、冷蔵庫で寝かせ熟成させることで出来上がるのです。
卵というとコレステロールが多く含まれ、コレステロールは健康に悪いというイメージもあります。
しかし鶏の卵に含まれるコレステロールが1g当たり420mgであるのに対し、たらこは280mgと少なめです。
また魚卵にはコレステロール値を抑えるEPAやDHAという脂質も含まれているため、私たちの健康を助けてくれます。
プチプチ食感と塩味、辛味を利用してポテトサラダや卵焼きに加えたり、マヨネーズを加えて和えることで、辛味が和らぎ子供でも食べやすくなります。
たくさんの魅力がある明太子を、毎日の食卓に上手に使っていきましょう。